2023.06.05
転職ノウハウ「平均勤続年数の正しい見方」 ~平均勤続年数が短い企業=離職率が高い企業ではない理由~
こんにちは。リージョナルキャリア大阪(株式会社グリッド)の吉田です。
先日、相談をいただいた転職希望者の方にある上場企業の求人をご提案した際、「調べたところ平均勤続年数が短く、辞める人が多そうな印象なので応募を避けたいです。」という反応がありました。
私としては業界内でも離職率が低く、働きやすい制度が整っている企業でしたのでこの反応に驚きつつも、下記の例を参考に納得いただけたという事がありましたので共有したいと思います。
例に見る老舗企業と急成長企業での比較
平均勤続年数と離職率の計算方法は下記の通りです。
・平均勤続年数の計算方法
平均勤続年数=常用労働者数の合計÷常用労働者の総人数
・離職率の計算方法
離職率=離職者数/1月1日現在の常用労働者数×100(%)
例えば下記の2社でそれぞれ平均勤続年数と離職率を比較してみます。
※分かりやすくするために同規模の企業にて比較させていただきます。
・A社
設立から100年の老舗安定メーカー。
ベテランには過ごしやすく40-50代が多く在籍。若手も老舗安定という事で採用はできているが定着に問題がある会社。
従業員数:100名 1年間の採用人数:10名 1年間の離職者数:10名
勤続年数:30年が30名、20年が30名、10年が20名、5年が10名、1年が10名
平均勤続年数=(900+600+200+50+10)/100 17.6年
離職率=10/100×100 10%
・B社
設立から10年のITベンチャー。設立5年目から自社開発のクラウドサービスが好調で、以降毎年二桁成長を続けている。今後の成長も見込んで採用数を大幅に増加。
従業員数:100名 1年間の採用人数:45名 1年間の離職者数:5名
勤続年数:10年が20名、5年が35名、1年が45名
平均勤続年数=(200+165+45)/100 4.1年
離職率=5/100×100 5%
比較してみていかがでしょうか。
平均勤続年数だけで見てみるとA社の方が圧倒的に高い数値になっていますが、離職率という点で見てみるとB社の方が低い数値になっています。では実際にはどちらが働きやすいのでしょうか。
上記の例ではA社もB社も人それぞれの価値観によって働きやすさの感じ方は違うと思います。A社では昔から在籍するベテラン社員にとっては慣れた環境でイキイキ仕事ができているかもしれません。またB社では今後の成長に期待を持ちながら、分からない未来を同じ価値観を持つメンバーと創っていくという面白さがあるのかもしれません。

自分にとっての最適な環境を判断するために
上場企業は有価証券報告書など平均勤続年数や離職率を確認できるかもしれません。ただし、設立からの年数が短い企業や成長曲線に伴い採用数をかなり増やしている企業にとって、平均勤続年数という指標は低くなってしまいます。
しかし、上記のように、平均勤続年数が短いからと言って、必ずしも離職率が高いとは限りません。多様な要素が関与しており、労働市場の変化や個人の志向、企業文化、産業の特性など平均勤続年数や離職率に影響を与えると考えます。
近年は企業規模や歴史に関係なく、人材確保を目指す企業において社員にとって柔軟性のある働き方が重要視されており、新しい働き方を取り入れるなど、人材獲得や定着につなげる取り組みや制度作りを行っている企業は多いです。
また、労働環境自体もますます多様化してきており、様々な価値観の中で転職を選択することが増えてきています。平均勤続年数が低い=離職率が高いという勘違いを避けるためにも様々な視点で企業研究をする事が大切だと考えます。
私たちとしては、それぞれの要素を考慮しながら、ご自身にあった選択ができるようにお手伝いができればと考えています。今後の企業選択の参考にしていただければ幸いです。